GNSSとは?
欧州全地球航法衛星システム監督庁 (GSA) は、公式ウェブサイトにてGNSSを次のように定義しています:
「グローバルナビゲーション衛生システム (GNSS) は、宇宙から位置およびタイミングのデータを GNSS 受信機に送信する信号を提供する、衛星コンステレーションです。受信機はこのデータを利用して位置情報を特定します。定義上、GNSSは全世界 (全地球) をカバーしています。GNSS の例としては、欧州のガリレオ、米国のナブスター全地球位置把握システム (GPS)、ロシアの全地球測位衛星システム (GLONASS) そして中国の北斗衛星測位システムなどがあります。」
GNSSの性能は、欧州静止ナビゲーションオーバーレイサービス (EGNOS) 等の地域衛星航法補強システム (SBAS) によって強化されます。EGNOSは、信号測定エラーを修正し、信号の整合性情報を提供することで、GPS情報の精度と信頼性を向上させています。
GPSはGNSSの初形態であり、最も広く使用されているシステムです。このため、すべてのタイプのGNSSを指すときに、一般的にはGPSという言葉がまだ使われていることにご留意ください。しかしながら、GPSを含むすべての全地球衛星測位システムの総称はGNSSであり、用語として正しいのはGNSSです。
ウェアラブルにおける測位性能
ウェアラブルカテゴリにおける測位性能に影響を与える要因を詳しく見てみると、いくつかの変数が傑出していることが分かります。これらの変数は以下の通りです:
工業デザインの観点から言えば、デバイスというものは薄く小さなものが望ましいとされています。しかしながら、 こうした特徴は難しい問題をGNSSアンテナに提示しています。
薄型・小型のデザイン:アンテナがその性能を発揮するには、できる限り多くの容量が必要です。このため、薄く小さなデバイスはアンテナの性能に理想的とはいえません。加えて、アンテナはリストや身体からできるだけ離れていなくてはいけません (これらは損失物質であり、性能に悪影響を及ぼします)。
GNSSチップセットも、測位性能に影響を及ぼす要因のひとつです。異なるチップサプライヤーは、電力消費、さまざまなユースケースにおけるパフォーマンス、そしてターゲットグループといった項目に関し、それぞれ異なる動機付けを持っています。こうした諸々の動機が、サプライヤーのチップ開発、およびチップの焦点領域の方向性を定めています。
使用環境のダイナミクスや特性は、データの精度およびパフォーマンスに影響を及ぼします。下記では、一般的なスポーツに影響を及ぼすいくつかの要因を挙げています:
ウォーキング
ウォーキング中、あなたの身体によってGNSS信号がブロックされる可能性があります。また、常に腕を振っていることでGNSSのパフォーマンスに支障が生じる原因となります。通常、腕時計は信号の受信状態が悪い位置にあり、データの精度を劣化させる傾向にあります。進行方向の変更は精度に大きく影響します。
ランニング
ランニング中、あなたの身体によってGNSS信号がブロックされる可能性があります。また、常に腕を振っていることでGNSSのパフォーマンスに支障が生じる原因となります。通常、腕時計は信号の受信状態は中程度の位置にあります。
サイクリング
サイクリング中は姿勢が前かがみになっているため、腕時計へのGNSS信号は身体によって頻繁にブロックされます。通常、腕時計は上を向いており、信号の受信状態は中程度~良好な位置にあります。腕またはハンドルバーにデバイスを装着している場合、デバイスの位置がころころ変わることはありません。このためダイナミクスが最低限に抑えられ、データ精度はより良好なものとなります。
スイミング
スイミング中、身体が信号をブロックすることはありません。通常、腕時計は信号の受信状態は不良~良好な位置にあります。常に腕を動かしていること、そして水中では腕時計は信号を受信しないという事実により、GNSSのパフォーマンスには難しい問題が生じます。また、泳法もGNSSの精度に影響を与えます (泳法、腕の振り)。信号を取得するには、腕時計は1秒以上は水上にあることが理想です。
アーバンキャニオン
たとえば、両側を高層建築に囲まれた道路では、渓谷に似た環境が生まれることがあります。このような環境は「アーバンキャニオン」と呼ばれます。
アーバンキャニオンでは、デバイスのマルチパス (ラジオ信号が反射し、複数の経路を通って受信アンテナに届く伝播現象) が起きやすい傾向にあります。マルチパスは、GNSSの読み取りに誤りが生じる原因となります。
アーバンキャニオンにおけるナビゲーションも、GNSSに難しい問題を投げかけています。そのような状況においては、可視衛星のコンステレーションもかなりの変化をもたらします。
森林
森林地帯のような樹木が茂ったエリアでのトレーニング中は、信号減衰 (送信時の信号強度の低減) によりGNSSのパフォーマンスが妨げられます。
オープンウォータースイミング
オープンウォーターでのスイミングでは、信号の視認性に問題が生じます。手首が水上にある時間がごく短いため、信号取得の時間が制限されます。また、水によって信号反射も引き起こされます。PolarデバイスのようなウェアラブルGNSSデバイスにとっては、オープンウォータースイミングが最も難しい使用環境だといえるかもしれません。
ソフトウェアアルゴリズムは、パフォーマンス強化のために使用されます。ソフトウェアはすべてをまとめて以下に適応します:
使用環境
- 腕の振り
- 身体によるブロック
- ダイナミックな環境の変化
- トレーニング間隔
使用条件
- マルチパス環境
- 低信号レベル環境
- 地下道
アルゴリズムは、GNSS受信機のチップセットサプライヤーとウェアラブル製品企業の両方によって開発されています。
GNSSとPolarウォッチ
Polarウォッチでは、GNSSを使用してスピード、距離、位置情報のトラッキングが行われます。スピードと距離の値は、多くのPolar機能のパラメーターによって使用されます (Running Indexなど)。トレーニング セッションで衛星ナビゲーションを使用しない場合、スピードと距離は手首の動きから、ビルトインの加速度計を使って測定できることにご留意ください。詳細については、GPS校正付きリストバンドで速度と距離を測定すると手首でのスピードと距離の測定の精度に影響するものは?をご参照ください。
ご使用のPolarウォッチのGNSS精度/GPS精度の詳細については、ユーザー マニュアルの技術仕様のセクションをご参照ください。
Polarウォッチにおけるポジショニング
衛星修正には、4台以上の衛星が必要です。修正後はさらに多くの衛星が発見されるため、衛星の数は増えることになります。使用できる衛星の最大数は 12 台です。A-GPSを使用すれば、この数には簡単に到達できます。修正が完了してトレーニング セッションがスタートすると、腕時計はさらに多くの衛星を移動中の計算に追加しようとします。
一部のPolarウォッチには気圧計 (圧力センサー) が搭載されており、正確な高度データを取得できます。初期高度はGNSSデータで校正されます。気圧計がない (しかしビルトインGNSS装備の) Polarウォッチでは、高度はGNSSデータのみに基づいたものとなります。GNSSに基づいた高度データは、ときに不正確な場合があります。高度の計算には6台以上の衛星が必要なこと、距離の測定時に高度データは考慮されないことにご留意ください。
GPSに加え、腕時計上の衛星ナビゲーションシステムの変更を行うことができます。この設定は、腕時計の一般設定 > 衛星位置情報 から実行できます。GPS+ GLONASS、GPS+GalileoさらにGPS+ QZSSの中から選択できます。デフォルトではGPS + GLONASSに設定されています。これにより、異なるタイプの衛星ナビゲーションシステムを試すことができ、各システムの圏内において、より良く機能するのはどのシステムかを検出することが可能になります。
Polar Grit X2 Pro/Ignite 3/Vantage V3はGPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSSといったシステムを同時に使用し、地球上どこでも最大の精度を実現します。デフォルトでは、この腕時計はデュアルバンドGPSも活用し、特に難しい使用条件下での位置精度を改善しています。詳しくは、Polar Grit X2 Pro/Ignite 3/Vantage V3 におけるポジショニングを参照してください。
GLONASS はロシアが開発した全地球航法衛星システムです。この3種の中でもとりわけ視認性と信頼性に優れていることから当社でもこのシステムを推奨しており、デフォルト設定にも使われています。
Galileo は欧州連合が開発した全地球航法衛星システムです。
QZSS は、4機の衛星群からなる地域別タイムトランスファー機能と衛星航法補強システムにより、日本を中心としたアジアオセアニア地域のGPS性能を補助するために開発されたシステムです。
A-GPS – 補助 GPS (エフェメリス予測)
A-GPSは衛星の位置と軌道を予測して主要な位置計算を排除し、修正時間の高速化と等しい効果をもたらします。14日間分の衛星予測データは、腕時計がモバイル端末に接続されている場合はPolar Flowアプリを介して1日に1回、または腕時計をFlowSyncと同期するときダウンロードされます。
A-GPSは常に使用して、修正時間を短縮するようにしてください。使用条件が厳しいものであるほど、A-GPSがもたらす恩恵は重要さを増し、また実感できるものとなります。また A-GPSは、トレーニングセッション中により良好な動的衛星を選択することで、全体のルート、スピード、距離の精度を改善する役割も果たしています。この違いは、困難な状況下でもはっきりと目立ちます。
A-GPSの制限
あなたが前回のセッションを行った場所よりも 100 キロメートル/60 マイル以上離れた場所でトレーニング セッションを始める場合は、A-GPSはあなたの大体の現在位置を知る必要があります。このため、最初の修正には通常よりやや時間がかかります。
その他の読み物
誠に勝手ながら、ゴールデンウィーク期間中は、サービスセンターを下記の通り休業とさせていただきます。
2024年 4月27日(土)~ 5月6日(月)
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